【第7章 16日目・9/26日】
32.決戦の場へ
谷原親子はいつも通りの様子でシンイチたちをむかえてくれた。
(シンイチ談)
午後1時50分。受け渡しまであと2時間10分。谷原自動車についた。
谷原自動車は、谷原作太郎、純一の親子が経営する、地元密着型の自動車整備工場だ。江戸っ子の奥さんが財布のひもを握り、固い商売をしている。
谷原さんには、社会人になってはじめて自動車をもったときからずっとお世話になってきた。自動車整備工場にとって、本来、金にならない車をとめることは、それが一台であってもうれしいはずがない。そこをわかっていてあえて頼んだ。事情を話したところ非常に快く引き受けてくれたのだった。
谷原親子と奥さんとがいつものように迎えてくれた。オフィスへ案内してくれる。奥さんの出してくれるあたたかいコーヒーに、あらためて感謝の念がわく。
谷原さん親子には、まず、コピー機を貸してもらえるように頼んだ。陸送会社から受け取る予定の添付書類、抹消登録原本と譲渡証をコピーしておくためだ。
陸送会社が私たちのただならぬ気配に気づいて車ごと逃げてしまうかもしれない。そんな場合でも、書類さえあれば、事故車の所有者本人とコンタクトを取ることが可能だ。情報は確保しておいて損がない。
午後4時00分、約束の時間になった。
しかし、陸送会社はなかなか来ない。約束の時間を10分すぎた時点で、谷原自動車さんに電話が入った。渋滞に巻き込まれたという。何か、私たちの想像も付かないような罠をかけようとして、わざと遅刻しているのだろうか。余計なことを考えてしまう。
外に出て、陸送会社の到来を待ちかまえる。サヤカとヒロミは部屋の中で待機している。ブラインドのすき間から外をのぞいているのが丸見えだ。彼女たちなりにもよほど緊張しているらしい。
午後4時40分、ようやく陸送会社が到着した。濃紺色の国産車Zを積んで。
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