【第1章 1日目・9/11土】
6.立ちふさがる三つの壁
盗難保険に加入していないことを想定し、情報を収集し続けるシンイチ。果たして警察は車を見つけだしてくれるのだろうか。
(シンイチ談)
あんな電話で起こされて、目が冴えてしまった。PCへ向かい、盗難保険についてひととおりの情報収集をする。
サヤカが加入している保険は「盗難」をカバーしているだろうか。もし含まれていなければ保険金に関してはお手上げだ。
となると、車の捜索を始めなければならない。そもそも、自動車盗難に対する警察の実績はどの程度のものなのだろうか。
調べてみて愕然とした。ネットの情報によるかぎり、自動車盗難における警察の無力さ、知識のなさはあきれるほどだ。
サヤカには警察へ連絡するよう指示したけれど、おそらく簡単な実況見分くらいしか行われないだろうな。
警察に届け出たからといって、簡単に解決しそうにない。それからさらに調べていくと、警察は「盗難車の情報をコンピューターへ入力をする」らしい。これは、それらしき車が出てきたときに、コンピューターの情報と照合するためだそうだ。
しかし、「それらしき車が出てくる」ために、警察は何をするか。…何もしないのだろう。
なぜなら、自動車盗難は非常に多い。一台一台捜査をするには手間がかかりすぎる。
警察官も普通の人間である。担当業務以外に、やっかいな仕事はできるだけしたくないだろう。自動車盗難は毎日余計な仕事が増えていく。「できるだけ関わりたくない」というのが本音だ。予算も組まれないのだろう。
シンイチは思った。
警察が率先して捜査をしてくれることは、まずないな。
実際に盗難にあった人で、奪還を叶えた人は果たしてどのくらいいるのだろうか。さまざまな自動車盗難の体験談をあさりつづける。さらに
google検索上「盗難車 オークション」で表示されたページを順に見ていく。
すると、自分の車をオークションにかけられていた、という被害者の話が目に入った。その方は、オークションの主催者であるyahooと警察に相談をしながら話をすすめていったという。しかし、結局yahooも警察もほとんど動いてくれなかったため、結局犯人と愛車の両方を取り逃がしてしまったらしい。
こりゃひどいな。
こちらまで怒りを抑えられない気持ちになる。そこまで調べて、時計を見ると朝9時。部屋を出て、食卓のある居間へ行く。窓の外は秋雨。いつの間にか、居間の座布団が夏用の麻から綿に取り替えられている。
祖母と朝食をとる。焼き鮭、青菜のおひたし、納豆、麦飯、かぶの味噌汁の朝食。鮭は脂がのっていて、うまい。うまい、というと祖母が喜ぶので、声に出して言う。
祖母にサヤカの自動車盗難の話をした。
「それはそれは、かわいそうに。ひどいことをする人がいるものね」
と眉をひそめる。
祖母はサヤカと食卓を囲む仲だ。祖母は昔、洋裁の講師をしていた。そのためかサヤカの仕入れる服の話には特に興味があるらしい。
食後、私が二人分の茶碗を洗う。祖母はかたわらでほうじ茶を入れてくれている。
祖母のほうじ茶は格別だ。直前に茶葉をから煎りする。こうすると香ばしさが違うのだという。鉄瓶で沸かした熱湯をゆるゆると注ぎ、少し待ってから粉引の白い茶碗についでくれる。やっぱりうまい。
一週間分のワイシャツとスーツ一着を持ってクリーニング店に出かける。そこからまっすぐ帰ってくる。なにしろ今日は調べることが多すぎる。この休みは忙しくなりそうだ。
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