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【第2章 3日目・9/13月】
8.無駄足を踏まないために
自宅近くにある神奈川南署へ向かうサヤカ。対応してくれたのは、なんとも無気力な警察官だった。
(サヤカ談)
午後7時。さやかは荷物をまとめオフィスをあとにする。
定時にあがるなんて何ヶ月ぶりだろう。駅に着くと待ちかまえていたかのように雨が降り出した。
タクシー乗り場へ歩いていくと、すでに行列ができていた。20分ほど待ち、ようやくタクシーに乗り込む。
前の客がタバコを吸っていたのか、車内の空気がよどんでいる。
「神奈川南署までお願いします」
シートに腰を下ろし、濡れて泥のついた足下を白いハンカチで押さえる。
神奈川南署はコンクリートの三階建て。タクシーを降りて足早に中へ入る。湿ったタバコの匂いと古くなった書類の匂いがする。
窓口らしきカウンターをみつけ、先日盗難現場へ来てくれた「鈴木さん」に取り次いでもらえるようお願いした。
「鈴木は定時であがりましたが」
35、6才の警察官が淡々と答える。
「そうですか。実は私、先日車を盗まれたんです。その件で進捗状況を伺いたいんですが…」
その警察官は返事もせずにパソコンに向かい、不慣れな手つきで何か調べ始めた。何を検索しているのか、5、6分たってようやく顔を上げた。
「とくに進展はないようですね」
まるで何ごともないように言う。まったくの無駄足だった。こんなことなら、仕事をしていればよかった。警察になんて出向くだけムダだ。
なんともともいえないむなしい気持ちで署をでた。歩いて帰る途中、ふと思い立ち、スーパーで買い物をすることにした。
あたたかいスープを飲んで、うすっぺらな自分の身体に力をつけてあげよう。たしか、ニンジンと玉ねぎとジャガイモは冷蔵庫にあったはず。
トマト缶と、ベーコン、マッシュルームをカートに放り込む。
果物もほしい。まるまると水をたくわえた梨が4こずつ、ラップで束ねられている。これもカートへ。
部屋に着き、そのままキッチンへ向かう。ベーコンをカリカリになるまでいためて具だくさんのトマトスープを作る。
シャワーを浴びてから、ゆっくりと食事をする。果物を切り分け皿に盛り、デスクに向かう。
そして、PCのスイッチを入れる。
シンイチに今日の報告メールを送ろう。
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