【第2章 3日目・9/13月】
9.ネットオークション・ローラー作戦
サヤカの報告をうけ、シンイチが考えだした新たな作戦。
その名も「ネットオークション・ローラー作戦」だ。
(シンイチ談)
勤め先のIT会社「株式会社インフォテクニカル」は、約20名のメンバーからなるベンチャー企業だ。
私はそこで「検索エンジン対策チーム」のリーダーとしてメンバーに指示を出している。
そして、他部署でありながら私の良きパートナーが同僚の本木。本木は社内のシステム全般を任された優秀なプログラマーだ。
プログラミングはもちろん、その他にも社員ののスケジュール管理、さらに新人教育まで行う。見習うべき仕事人だ。本木との連係プレーで、今日も効率よく仕事を進めていく。
クライアントからのクレームを対処した後、業務フローを見直してから退社した。心地よい疲れを感じる。
ん?また雨か。よし、駅まで走って帰ろう。
家についた頃には11時30分を過ぎていた。音を立てないよう玄関の戸を開く。ネクタイをはずしながら居間へ入ると、食卓にはいつも通り、ふせた茶碗とメモ紙が置いてある。
「おかえり。夕食は、肉豆腐、玄米ご飯、おくらのお味噌汁、いんげんの胡麻よごしです。」
味噌汁を温めて、遅い夕食をとる。
肉豆腐に箸をのばしたとき、ふとサヤカの盗難事件が頭をよぎった。
警察には頼れそうにないしな。さて、どうしよう。
風呂に入りさっぱりしたあと、ねまきに着替える。冷蔵庫を開け、指がしびれるほどよく冷えた瓶ビールを取り出して栓を抜く。それから部屋に戻りPCのスイッチを入れた。
サヤカからのメールだ。盗難保険がカバーされていなかったこと、警察は(案の定)何も進めていなかったことなどが簡潔に書かれていた。
サヤカの性格からして、「盗難」という現実から逃避しつつあるのは確かだ。
しかし今回の件は大きすぎる。「500万円」は逃げるに逃げられない額だ。現に今も犯人は、サヤカの車を乗り回すなり、オークションにかけて売るなり、何らかの行動を着々と進めているかもしれないのだ。
…オークションかぁ。実際に体験談もあったことだ。これも少ししらべてみるか。
時計を見ると夜12時35分。サヤカはまだ起きていることだろう。電話をかける。
「シンイチ?どうしたの?」
やはりサヤカは起きていた。
「PCは起動させてるだろ?さっそく『ネットオークション・ローラー作戦』を開始するぞ。」
電話口でもサヤカが面食らっているのがわかる。「ネットオークション・ローラー作戦」とは、何のことはない、あらゆるネットオークションをしらみつぶしに調べ、サヤカの車らしきものを探す、という作戦だ。即席で命名した。
早速、作戦開始だ。サヤカはyahooオークションを、私はその他のオークションを手当たり次第みていくことにした。 |